定点調査コラム~「好きなものを好きな時に好きなだけ」期待されるテレビコンテンツ~新美上席研究員

グラフの波形から見えてくるテレビ視聴スタイルの変化

「テレビ視聴パターン」時系列グラフの波形を眺めると、テレビの見方の変化が見えてくる[図1]。

[図1]テレビ視聴パターン

テレビは「リアルタイム視聴が多い」と答えた人は今年42.9%(東京。以下、東京のデータ)と6年前から約19ポイント(2011年:61.8%)減少し、「録画視聴が多い」と答えた人は35.1%と約16ポイント(2011年:19.2%)増加した。「リアルタイムと録画は同程度」と答えた人はじわじわと増加し、19.9%(2011年:15.9%)と2割に迫った。

変化がないのは「テレビは見ない」で、2011年の調査開始以来、一貫して1%程度で推移している。デジタル機器の所有状況を見ると、いまや8割の人がHDDレコーダーを所有しており[図2]、自分の生活に合わせてテレビコンテンツを楽しむスタイルは定着した感がある。

[図2]HDDレコーダー所有率

テレビコンテンツはあらゆるスクリーンへ

放送局発のサービスも充実してきている[図3]。各社が提供する「見逃しサービス(無料)」の認知は過半数を超え(2016年:44.8%→2017年:55.0%)、利用は2割に迫った(2016年:9.0%→2017年:18.4%)。2年前にサービスを開始した「TVer(民放公式テレビポータル)」の認知は昨年から急速に伸びて半数に近づき(2016年:22.9%→2017年:47.0%)、利用は昨年の3倍以上(2016年:3.8%→2017年:13.7%)となった。テレビコンテンツはテレビ受像機のみならず、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどさまざまなスクリーンに広がり、生活者にとって、気軽にテレビコンテンツを楽しめる機会が増えている。

[図3]放送局サービス【認知率・利用率】

「とことん楽しみたい!」生活者のコンテンツ欲求

「好きな情報やコンテンツは、好きな時に見たい」(2016年:52.4%→2017年:55.5%)欲求は当たり前のことになりつつあり[図4]、「テレビ番組や動画など気に入ったコンテンツは何度でも繰り返し見たい」(2017年:41.8%)という欲求も生まれている[図5]。特に、モバイルシフトを牽引した若年層にその欲求は顕著に表れ、10・20代女性は約7割、20代男性は8割が気に入ったコンテンツは何度でも繰り返し見たいと答えている。自分のライフスタイルに合わせて、「見たいものを見たい時に見たいだけ見る」のが今の生活者のコンテンツ欲求なのである。

[図4]好きな情報やコンテンツ(音楽、動画、写真、文章など)は、好きな時に見たい
[図5]テレビ番組や動画など気に入ったコンテンツは何度でも繰り返し見たい

さまざまなサービスの普及やデバイスの発達によって、生活者の「いつでも見たい」という欲求は満たされるようになったが、「見たいものを見たいだけ」という生活者のある意味わがままな欲求を満たすためには、生活者の「見たい欲求」を掻き立て、何度見ても良いと感じさせるコンテンツを作る必要がある。テレビは「おもしろい」し「楽しい」し「感動や興奮を覚える」といった生活者の期待が高まっている[図6]今こそ、そのチャンス到来だと考える。

[図6]テレビのメディアイメージ
新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。