定点調査コラム~充実する「ホームシアター」と家の「シネコン化」~新美上席研究員

4Kテレビで充実する「ホームシアター」

12月1日、新4K・8K衛星放送が始まった。これに伴い、新放送に対応した4Kテレビも多数出揃った。メディア定点調査では、2015年から4Kテレビの認知・所有・所有意向について調査している。2018年の4Kテレビの認知は8割前後(東京:80.6%、大阪:78.2%、愛知:77.2%、高知:76.7%)。所有はいずれの地区も1割に満たないが(東京:6.3%、大阪:5.7%、愛知:7.6%、高知6.0%)、所有意向は3割前後(東京28.2%、大阪27.4%、愛知29.9%、高知35.8%)となっている。

これはメディア定点調査実施時(2018年1月末~2月初め)の数字であるが、年末商戦を迎えたいま、所有がどれだけ伸びているのか非常に興味深い。高画質・大画面のテレビが増加し、順次開始が予定されている有料放送サービスなどのコンテンツが潤沢になることによって、自宅の大型スクリーンで映像を楽しむホームシアターは、より身近で手軽なものになり、益々充実することが予想される。

増加するスクリーンと家の「シネコン化」

メディア定点調査の結果やインタビュー調査などを通じて生活者の映像視聴行動を見ていると、一つの建物の中で複数の作品を上映する「シネマ・コンプレックス(以下シネコン)」のごとく、家が「シネコン化」してきていると感じることが増えた。

テレビ、パソコンに加えてスマートフォンやタブレット端末など、スクリーンの数は急速に増加している。一人がさまざまな機器を持つようになり、スマートフォンを一人で複数台持つことも珍しくなくなった。自宅内にWi-Fiが普及し(東京:88.1%、大阪:81.8%、愛知:88.3%、高知:68.6%)、テレビはテレビコンテンツだけを楽しむ機器ではなくなった。さまざまなスクリーンで、インターネット上の無数のコンテンツを見ることができる環境が整ったのである。TVerなどのテレビコンテンツ関連サービスや定額制動画配信サービスの利用者も増えている[図1]。

[図1]


「スポーツ中継を4Kテレビで盛り上がる」、「寝室のタブレット端末で定額制動画の海外ドラマを楽しむ」、「入浴時にスマートフォンで見逃した番組を見る」、「自室のPCでLIVE動画に没頭する」等々、一つ屋根の下に、好きなコンテンツを好きな部屋の好きなスクリーンで楽しむ複数の映像空間が出現している。

これが、「家のシネコン化」である。家族全員で一台のテレビを囲む団欒風景を懐かしむ気持ちもないではないが、思い思いに楽しむことができる映像空間が家の中にいくつもあることは、贅沢で豊かな風景だと思うのである。そして、自宅での豊かな映像視聴は、「良い作品については、映画館で見たいと思う」気持ちを掻き立てるのではないだろうか。スマホネイティブの10代女子がどの年代よりも「良い作品については、映画館で見たいと思う」気持ちが高いというメディア定点の結果を見ながら、そんなことを考えている[図2]。

[図2]


新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。