教えて! あなたのドラマ選び サブスク時代にリアルタイム視聴する理由とは? @メ環研の部屋

あらゆるコンテンツがスマホで楽しめる現代。その状況でも、テレビドラマの人気ぶりは健在です。しかし、選び方や視聴スタイルは多様化しています。今の生活者は何を基準に作品を選び、どう視聴しているのでしょう? また、サブスク時代にリアルタイム視聴をする意義は?

今回のメディア環境研究所の「メからウロコ」では生活者のドラマ選びの現状をリサーチ。調査結果と実際のドラマファンの声をお届けします。担当は野田上席研究員です。

テレビドラマ視聴の現状:ファンは年代関係なくリアルタイム視聴

今回は、全国15~69歳の男女を対象に「テレビドラマの視聴実態と選択意識」についての調査を行いました。

まず、どれほどの人がテレビドラマを視聴しているのでしょうか。調査では、全体の6割以上がドラマを視聴。年代別では30~40代で少し減るものの、どの年代も大きな偏りなく視聴しています。

「テレビドラマが好き」という人は10~20代で多く、7割近くが好きと回答しました。

視聴に用いられるデバイスは、全体で見るとテレビ受像機が8割強ですが、年代別では違いも。10~20代の45.5%、つまり半数近い人がスマートフォンを挙げました。

野田が注目したのは使ったことがある視聴方法の項目。調査時点で、3割の人がすでにTVerなどの見逃し配信を利用しています。

次に、最も多い視聴方法を1つ選んでもらったところ、「リアルタイム」が37.4%なのに対し、約6割が自身の都合の良いタイミングで視聴できる「録画(42.0%)」と「見逃し配信サービス(16.3%)」を選択しており、「リアルタイム視聴」を上回っています。

年代別でみると、10-20代の4人に1人にあたる24.6%が最も多いテレビドラマ視聴方法として「見逃し配信サービス」回答しました。

しかし、この最も多い視聴方法の回答を「テレビドラマがとても好き」というドラマファン層のみに絞ると、タイムシフトが多いと思われた10~20代でリアルタイム視聴をする人が最も多いという結果に。

理由を尋ねたところ、「リアルタイムが一番盛り上がるから」などが挙がりました。タイムシフト型が広がる中でも若いファン層はリアルタイム視聴をするというのは着目しておきたい点です。

テレビドラマを選ぶプロセス:年代ごとに異なる情報源を活用

次に、テレビドラマを選ぶプロセスを見ていましょう。「新しく放送されるドラマから見るものを選ぶとき重視する要素」では、全体的に「ストーリー」「出演者」「ジャンル」が重視される中で、10~20代は「主題歌・音楽」「制作チーム」にも関心を持っていました。彼らの興味関心がドラマ周辺へも広がっていることを示唆しています。

新しいドラマを見るきっかけでは、どの年代でも「テレビCM」と「ドラマの番宣番組」が2トップに来ています。

しかし、ドラマファン層にだけ絞ると、結果はガラッと変わります。「テレビCM」はいずれも1位ですが、10~20代は2位に「ドラマ公式のSNS」、3位に「TVerのドラマランキング」。30~40代は3位「ネットのニュース」、4位「家族友人らの口コミ」。50~60代では「同じ曜日と時間帯を録画」が挙がり、年代ごとに異なる情報源を重視していることが見えてきました。

以前は、一般的にドラマの放送回が進むに連れて視聴率は下がると言われていました。しかし、最近では上がるというケースが出ています。今回の調査でも「数話が放送後でも、途中から見始めることはあるか」という問いに対し、「よくある(20.1%)」「ときどきある(50.6%)」という途中エントリー層が全体で約7割もいました。

途中エントリー層は特に10~20代が多く、「よくある」「ときどきある」を合わせて8割近くが放送クール中に「途中参戦」をしています。

では、途中視聴を始めるきっかけは何なのでしょうか? 全体では「ドラマのダイジェスト番組(42.9%)」がトップ。しかし、年代別では様相が変わってきます。

10~20代のトップは「Twitterのトレンド(43.4%)」。次に「TVerのドラマランキング(24.7%)」「ドラマ好きの人のSNSの評判(18.7%)」と、若い世代ではTVerとSNSの存在感が大きいようです。

30~40代で特徴的に高かったのは「ネットのニュースで話題(32.9%)」。新しいドラマを見るきっかけ同様に、30~40代はネットのニュースへの関心が高いようです。50~60代では「途中からでも内容に入りやすかった(30.6%)」がトップでした。

続いて、テレビドラマを選ぶ際の意識も聞いてみました。各年代で「時間が充実しそうなドラマを選びたい」「無駄な時間にならないように選びたい」が3割超えと、共通してドラマ時間を有意義にしたいという欲求が見受けられます。

しかし、選択肢の「世の中の評判より、自分の感性で選びたい」と「みんなで話題にして楽しめそうなものを選びたい」に注目すると、年代別に特徴がありました。

50~60代で高かったのは「自分の感性で選びたい」、一方、10~20代では「みんなで話題にして楽しめそうなものを選びたい」が高かったのです。

さらに10~20代は「みんなが見ているドラマを選びたい」を選んだ人も多く、若い世代ではドラマが「共通の話題」「みんなで盛り上がれるもの」と位置づけられていることが見てとれます。

テレビドラマの楽しみ方:若者は周辺コンテンツも味わい尽くす

最後に「ドラマをより楽しむための工夫」を、新たな潮流を知るために10~20代を中心に見ていきます。

まず10~20代はドラマを楽しむためにSNSを多用。「ドラマをみた人のSNSのつぶやきや感想を読む(53.2%)」、「ドラマに詳しい人のSNSを見て考察や分析を読む(47.5%)」。番組や俳優の公式SNSをフォローする人も3割います。さらに、「友達と音声通話やチャットをしながらみる」が36.0%。若者にとってSNSはドラマをより楽しむための重要なツールなのです。

そして、10~20代では「お気に入りシーンを繰り返しみる」という人が44.8%もいました。「切り抜き動画や画像をみる(40.7%)」「切り抜き動画や画像をつくってシェアする(30.3%)」も他の年代より10pt以上高く、好きなドラマは何度も見て楽しんでいることがわかります。

また、10~20代はより多くの人が撮影や制作の現場へ高い関心を持ち、撮影地などの訪問、グッズの購買などいずれも他の年代より多いという調査結果に。

さらに、出演者や制作者の過去作品、原作への関心も高いようです。現在は、過去のドラマも動画配信サービスで容易にたどれることもあり、約3人に1人の割合でドラマのルーツを探ることに意欲的です。

若い世代はドラマをスクリーンの中で味わうだけでなく、その外側に広げていくことも含めて楽しんでいる姿が見えてきました。

話題になった「倍速視聴」について。若年層ほど倍速視聴の傾向があり、10~20代では「いつも倍速(23.6%)」「ときどき倍速(25.9%)」を合わせると倍速利用率は49.5%にも上りました。さらに、倍速視聴は上の世代にも広がっています。

さて、倍速視聴の目的は「時間の節約」だけではありません。10~20代では「新しく始まる複数のドラマを視聴して比較し、見続けるドラマを選べる(22.4%)」「好きなシーンを繰り返し何度でも見やすい(18.4%)」「これまでのおさらい視聴を手早くできる(17.0%)」と、理由にドラマへの探究心を挙げる人が多いという結果になりました。


今の生活者は、放送前には公式が発信するドラマ情報を吟味し、放送開始後はサービスやツールを駆使して何度も好きなシーンを見るなど、俳優や作り手の思い、作品のルーツなどの周辺や裏情報まで味わい尽くす傾向にあることがわかりました。

そして、ドラマが好きなファン層はリアルタイム視聴を好み、SNSやネットのニュースなどで盛り上がるところまでを楽しんでいます。そんな盛り上がりを見て、途中からでも視聴しようという人が7割もおり、見逃し配信サービスが途中から視聴を始める層の大きな助けになっていました。

つまり、現在のテレビドラマの視聴スタイルには、盛り上げてくれるファンが新たな視聴者を連れてくるという流れが生まれているのです。

※こちらで発表した資料はダウンロードいただけます。

(編集協力=沢井メグ+鬼頭佳代/ノオト)

登壇者プロフィール

野田 絵美
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、食品やトイレタリー、自動車など消費財から耐久財まで幅広く、得意先企業のブランディング、商品開発、コミュニケーション戦略立案に携わる。生活密着やインタビューなど様々な調査を通じて、生活者の行動の裏にあるインサイトを探るのが得意。2017年4月より現職。生活者のメディア生活の動向を研究する。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。