時間・場所・スクリーンを自由に横断しながら接触されるコンテンツ @メ環研プレミアムフォーラム2024夏レポートvol.1
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2024年8月27日、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所によるフォーラム【コネクテッド時代のメディア選択「平要快熱」】が開催されました。
レポートvol.1では、「メディア定点調査2024」と「スクリーン利用実態調査2024」という異なる2つの調査結果をもとに、変化し続けるメディア環境の現状をお伝えします。発表者は、メディア環境研究所 所長 田代奈美です。
テレビとスマホ、接触時間の差が拡大
1つめで紹介する「メディア定点調査」は、メディア環境研究所が2006年から実施している時系列分析が可能な定点観測調査です。
メディア接触時間やメディアイメージ、所有しているデバイスなど多種多様な観点から、メディア生活全般の現状・変化・兆しをとらえることができます。
メディア総接触時間の推移は? 2024年は432.7分
まず、メディアの総接触時間をみていきましょう。
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2024年のメディア総接触時間は432.7分でした。2022年にテレビとスマホが逆転し、スマホがテレビの接触時間を超えました。2024年は両者の差がさらに開いています。
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「携帯/スマホ」のシェアは4割、PCを含むデジタルのシェアは6割
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メディア総接触時間の構成比をみると、2024年はパソコンやタブレット、スマホなどデジタルの接触が初めて6割を超えました。やはりデジタル化はますます進んでいます。
メディア接触時間の総量は「男性20代」が530分強
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2024年の性年代別メディア総接触時間で、突出しているのが「男性20代」。メディア総接触時間は530分を超えています。
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10代・20代男女、30代女性のスマホの接触時間は200分を超えています。スマホ以外で200分を超えているのは、60代女性のテレビだけです。やはり、性年代によるメディア接触の違いが表れています。
若年層のメディア接触は大半がデジタル
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性年代別メディア総接触時間の構成比をみると、10~20代男性はデジタルのシェアが約8割です。10~20代女性では、スマートフォンの接触だけで約5割のシェアを占めています。男女でも接触の仕方に違いが出ているのがわかりました。
動画配信サービス、音声配信サービスの利用は右肩上がり
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上図は配信サービス利用の推移で、左側が動画配信サービス、右側が音声配信サービスです。2016年の調査開始以降、いずれも右肩上がりに増えています。
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とくにTVerの数字が大きく伸びており、2024年に利用率が5割を超えました。音声配信サービスも、コロナ禍を経て徐々に伸びている状況が確認できました。
テレビスクリーンのデジタル化が進んでいる
ではテレビのインターネット接続状況、つまり「コネクテッドTVになっているかどうか」の調査結果はどうなっているのでしょうか。
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「テレビがインターネットに接続されているか?」「ストリーミングデバイスを所有しているか?」という2つの質問に対して、いずれも利用率が伸び続けています。テレビスクリーンのネット化、コネクテッドTV化が加速しているといえます。
各種配信サービスの視聴は3割以上に
それでは、生活者は「テレビを見る時間」をどのように捉えているのでしょうか。
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「『テレビを見る時間』と想起したもの」への回答をみると、2024年は動画配信サービス(見逃し視聴、有料動画、無料動画)の視聴が3割を超えました。
SNS・テレビ・ラジオなど多様なサービスの利用率が過去最高
スマートフォンの接触時間は毎年伸び続けていますが、その中で生活者はどういうメディアサービスを使っているのでしょうか。
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上図のスマートフォンの中にある項目は、2024年に過去最高の利用率をマークした行動です。SNSが80.4%、無料動画が80.3%、加えてテレビやラジオのコンテンツ消費も3割を超えています。ニュースや新聞社のサイト/アプリは、過去最高ではなかったものの、一定以上の割合で利用されていることが分かります。
進む生活のモバイルシフト、高まる情報の正確性への意識
「メディア定点調査」では、接触時間のほか64項目にわたる生活者のメディア意識の変化についても調査しています。その中で、2024年に高まった上位2つは、いずれも生活行動に関する項目でした。
生活行動のモバイルシフトが進んでいる
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スマートフォンの行動変化では、「スマートフォンのアプリでチケットを購入する/お店を予約することが増えた」という項目が6割を超えています。生活行動のモバイルシフトが進んでいるといえます。
「好きな情報を、好きな時にいろんな場所で見たい」欲求は過去最高に
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続いて、コンテンツ接触に関して。「好きな情報やコンテンツは好きな時に見たい/いろいろな場所で見たい」という欲求は、2024年も過去最高を更新しています。
情報の正確性への意識が高まっている
2024年のメディア定点調査では、生活者が情報の正確性に対して敏感になっていることも明らかになりました。
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「インターネットの情報は、うのみにはできない」「情報は伝える速さよりも、内容の確かさだと思う」「気になるニュースは、複数の情報源で確かめる」という項目が7~8割のスコアとなり、いずれも過去最高です。
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スマホを中心としてデジタル接触が伸びており、生活行動のモバイルシフトが進んでいます。また、生活者のメディアに対する捉え方が多様化する一方で、情報の正確性などに対する意識が非常に高まっていることが分かりました。
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多様化する「スクリーン」と「コンテンツ」の利用実態
ここまで見てきた通り、スクリーンやコンテンツとの接触の仕方は多様化しています。そこで、メディア環境研究所では、生活者のスクリーンとの向き合い方により深く注目する新たな調査を実施しはじめています。それが、「スクリーン利用実態調査」です。
対象となるスクリーンは、テレビ、スマホ、タブレット、パソコンの4つ。それにテレビや動画サービス、SNSなど13のサービスを掛け合わせ、生活者がスクリーンおよびコンテンツに接触している時間を調査しています。
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テレビ、スマホ、タブレット、パソコンを合わせた1日の利用時間は、807.6分(13時間27分)でした。実に1日の半分以上、スクリーンに接触していることになります。
4つのスクリーンの内訳は、スマホ274.3分、テレビ249.2分、パソコン194.7分、タブレット89.4分で、テレビとスマホのシェアが多くなっています。
各スクリーンで消費されるサービスは多様化
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上図は、スクリーンごとの各サービスの接触時間をグラフにしたものです。見て分かるとおりカラフルになっており、各スクリーンで10以上のサービスが利用されています。
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興味深いところでは、テレビの中にラジオが7.1分入っています。これはスマートテレビで、アプリを使ってラジオを聞いているものだと思われます。生活者は各スクリーンで、いろいろなサービスを享受していることが見えてきました。
各サービス接触時間のトップ3は「テレビ番組のリアルタイム視聴」「ヨコ型無料動画」「インターネット」
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全スクリーン合計の中で、サービスごとの利用時間をみてみましょう。トップ3は「テレビ番組のリアルタイム視聴」が127.1分、「ヨコ型の無料動画」が100.7分、「インターネット」が98.7分でした。
コンテンツのタッチポイントは多接点に
最後に、13のサービスを横に並べて、4つのスクリーンを積み上げた接触時間のグラフを見てみましょう。
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多くのサービスが、4つのスクリーンすべてで利用されていることが分かります。まさに、コンテンツのタッチポイントが多様になっているのです。
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インターネットにつながるスクリーンが増え、「サービスやコンテンツ」×「視聴デバイス」の組み合わせがますます多様化しています。生活者は時間や場所、スクリーンを自由に横断しながら、情報やコンテンツに接触をしているのです。
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vol.2以降では、これらの調査結果を踏まえ、さらに生活者のメディア利用実態を深堀していきます。
(編集協力=村中貴士+鬼頭佳代/ノオト)
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※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。
メディア総接触時間は2023年より減っていますが、「コロナ禍でメディア接触が伸びた頃から高止まりである」と捉えています。