溢れる情報の中、確かな情報を求める生活者~メディア定点調査2017時系列分析から~新美上席研究員

メディア環境研究所が2006年から年1回定点観測している「メディア定点調査」は、今年12年目を迎えました。時系列分析から見えてきた生活者のメディア接触の変化をご紹介します。

メディア総接触時間は378.0分と減少に転じる

2017年のメディア総接触時間は378.0分(1日あたり・週平均)。「タブレット」を除く6メディアの接触時間が減少したことにより、メディア総接触時間は昨年の393.8分から15.8分減少しました。

「携帯・スマホ」は調査開始以来、初の微減(2016年:90.7分→2017年:90.2分)。「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」の4マスメディアと「パソコン」が減少し、「タブレット」のみが微増(2016年:24.9分→2017年:25.0分)した結果、「タブレット」と「携帯・スマホ」を合わせたモバイルがメディア総接触時間に占めるシェアは、30.5%と初めて3割を超えました。

「タブレット」を除く6メディアの接触時間が減少した要因として、全メディアでライト接触層(1日あたり1時間未満接触)の比率が増加したことが考えられます。特に「パソコン」はライト接触層が大きく増加(2016年:45.1%→2017年:52.5%)しました。

「パソコン」の接触時間は、ピーク時の2011年(81.7分)から22.4分減少し、今年59.3分と1時間を割りました。また「雑誌」「パソコン」以外の5メディアでは、ライト接触層比率の増加に加えて、ヘビー接触層(1日あたり3時間以上接触)比率の減少が同時に起こったことも各メディアの接触時間の減少を促進しました。

中高年層に広がるモバイルシフト

調査開始時(注)1割に満たなかったスマートフォンの所有率は、今年77.5%と8割に迫りました。昨年(70.7%)から大きく伸びた要因としては、中高年層(40~60代男女)の所有率の増加があげられます。所有率が最も低い60代女性においても39.6%と4割に近づきました。若年層の牽引によって急速に進んだモバイルシフトは、中高年層にも広がりを見せています。

注)スマートフォン所有率は2010年より調査開始

情報量の過剰感を感じ、確かな情報を求める生活者

メディア定点調査では、2016年より生活者の意識や態度に関する項目を拡充しています。今年、生活者の情報に対する意識の変化が目立ったものをご紹介しましょう。

「世の中の情報量は多すぎる」は昨年から10ポイント近く上昇(2016年:42.1%→2017年:52.0%)し、過半数を超えました。「インターネットの情報は、うのみにはできない」も7.3ポイント上昇(2016年:71.7%→2017年:79.0%)して、約8割の人がネット情報の信頼性に対して疑問を抱いていることがわかります。

また「気になるニュースは複数の情報源で確かめる」が5.3ポイント上昇(2016年:59.1%→2017年:64.4%)しました。一方、最も減少した項目は「情報やコンテンツは無料で十分」で、昨年と比べて6.8ポイント(2016年:46.0%→2017年:39.2%)減少しました。調査の結果から、溢れる情報の中で情報量の過剰感を感じながら、自分にとって信頼できる確かな情報を求める生活者の気持ちの高まりが感じられます。

スマートフォンが普及し、ソーシャルメディアが発達したメディア環境において、生活者にとって「信頼できる確かな情報とは何か?」ということを考えてコミュニケーションを設計していくことが、今メディアに求められているのではないでしょうか。

【「メディア定点調査2017」調査設計】

調査地区:東京都、大阪府、愛知県、高知県
標本抽出方法:RDD(Random Digit Dialing)
調査方法:郵送調査法
調査対象者:15~69歳の男女
標本構成:4地区計 2,496サンプル(東京631、大阪618、愛知618、高知629)
2015年住民基本台帳に基づき性年代でウエイトバックを実施
調査期間:2017年1月26日~2月10日
調査機関:株式会社ビデオリサーチ

AdverTimes「メディアガイド2017」リレーコラムより転載

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新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

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