【メ環研の部屋】発見!令和のテレビっ子 調査結果報告&ライブインタビュー

メディア環境研究所の研究員が日々追いかけているトレンドや、調査速報などを発表し、ご関心をお持ちの皆さまとカジュアルに意見交換・議論をするオンラインイベント「メ環研の部屋」。

6月22日開催のイベントでは、変わりゆくメディア生活の実態やふとした疑問を明らかにする新企画「メ環研のメからウロコ」がスタート。第1回は「発見!令和のテレビっ子」と題し、テレビに関する意識調査の結果を交えながら、テレビ番組が好きな人とはどんな人なのかを探りました。

見逃し配信やスマホ視聴など、テレビ番組を取り巻く状況が変わりつつある今、「テレビっ子」たちはテレビをどう楽しんでいるのか。メ環研の野田上席研究員をモデレーターに、山本グループマネージャー(以下、山本GM)と一緒に考えていきます。

若者ほど「テレビ番組がとても好き」

イベントの前半では、2021年5~6月にメ環研が実施した「テレビ番組視聴意識調査2021」から、「メからウロコ」となる3つのポイントを紹介しました。

1つめのポイントは「若者ほどテレビ番組がとても好き」ということ。

各年代にテレビ番組への好感度を聞いたところ、10〜20代で「とても好き」と答えたのは33.9%。30〜40代の23.9%、50〜60代の27.2%を超える数字となりました。さらに年代別の調査では、10代の41.3%が「とても好き」と回答。

好きな番組のジャンルでは、10〜20代は「ドラマ」「バラエティ」「アニメ」が好きという結果に。30〜60代が報道やスポーツなど幅広いジャンルを好むのに対して、若者は好みがハッキリと分かれています。

詳しく見ると、「ドラマ」は女性を中心に高い支持を集め、「報道」「ドキュメンタリー」は40〜60代がメイン。意外なところでは、「アニメ」は男性を中心に50代まで幅広く支持されていました。

また、テレビ番組を見る機器について聞いてみると、10~20代で最も多いのは「テレビ受像機」(63.7%)ですが、「スマートフォン」(54.6%)も過半数を超えています(複数回答)。「パソコン」「タブレット」の割合も他の世代より高く、30~60代が「テレビ受像機」で80%以上を締めているのに比べると、さまざまな機器でテレビ番組を視聴しているようです。

さらに10~20代は、リアルタイム放送やビデオ録画に加え、TVerなどの見逃し配信、Amazonプライムなどの有料動画配信サービス、YouTubeまで、幅広いサービスでテレビ番組を視聴しており、テレビ好きはさらにその傾向が高くなっています。

野田上席研究員は「意外にも若者ほどテレビが好きで、さまざまな手段で視聴している。『テレビはオワコン』などと言われがちだけど、10~20代はテレビ番組が大好きということが今回の調査でわかった」と話しました。

SNSや見逃し配信を駆使して、テレビ番組を自由に楽しむ

2つめのポイントは「多くの選択肢の中で失敗を回避するのが令和のテレビっ子」。事前に番組の内容を調べたり、評判を聞いて後追いで視聴したりする行動が浮かび上がってきました。

10〜20代のテレビ好きでは、「新しい番組を観るときは、失敗しないように周囲の評判や番組の内容を詳しく調べる」のが47.3%、「話題になっている番組を後追いで観ることが増えた」が67.5%と、全ての世代でトップの数字に。30〜40代のテレビ好きも、約6割が「後追い視聴」をしていました。

また、10~20代の半数近くが、SNSで話題になっていることをきっかけに新しい番組を見はじめたり、見逃し配信サービスの「ランキング」を参考に見る番組を選んだりするという結果も。令和のテレビっ子たちは、SNSなどの情報源を駆使しつつ、失敗しないように番組を選んでいるようです。

リアルタイムや関連動画、SNSなどで複層的にテレビ番組を楽しむ

最後となる3つめのポイントは「令和のテレビっ子に刹那なし」

令和のテレビっ子たちは、放送をリアルタイムで見て終わりではなく、関連コンテンツを含め、何度も繰り返しテレビ番組を楽しんでいるようです。

各世代のテレビ好きに「テレビ番組の楽しみ方」を聞きました。トップ3はどの世代も同じ顔ぶれで、「なるべくリアルタイムでみる」が1位になっています。ここで注目したいのが、10~20代で2位の「番組が放送される翌週までの間に繰り返し見たり、関連動画を見て楽しむ」。

その内訳を見ると、「評判のシーンや面白いところだけを見る」が約3割。他にも「見逃し配信サービスで繰り返し見る」「番組公式のSNSをフォローする」など、楽しみ方はさまざまです。「お気に入りシーンをクリッピングして保存できたら嬉しいか」という質問には、10~20代テレビ好きの57%がYESと答えました。

野田上席研究員は「スマホで取れる情報も含め、気持ちを高めるために翌週まで何度も見る、という傾向がある」と話します。

また、10~20代テレビ好きは「好きな番組を見るときはなるべく大人数で見たい」が4割を超え、「いいと思ったシーンを仲間にシェアできたら嬉しい」という質問には約半数がYESと答えました。

これら3つのポイントを振り返り、野田上席研究員は「テレビ番組の楽しみ方が多様化しており、10~20代は上の世代に比べ、さまざまなやり方で自由にテレビ番組を楽しんでいる。その結果が『テレビ番組がとても好き』につながっているのではないか」と、まとめました。

では、実際に10~20代のテレビ好きはどのようにテレビ番組を楽しんでいるのでしょうか? 調査結果を発表した後に大学生のMさん(4年生・女性)とSさん(3年生・女性)に登場いただき、イベント内でインタビューを行いました。

自分のタイミングで見たいからTVer、好きなシーンは10秒戻しで何度も見る

ドラマが好きなMさんは「ドラマは見たい気持ちをMAXまで高めてから見る」と話します。

「本当に集中してみたいので、ご飯を食べながらではなく、部屋を暗くしてテレビの前に座って1人で見ます。リアルタイムだと、決まった時間に見なきゃいけないので、自分の好きなタイミングにTVerで見ています」(Mさん)

恋愛ドラマが好きなMさんが最近ハマったドラマは、『着飾る恋には理由があって』。「キュンとしたシーンは TVerの『10秒戻し』機能で繰り返して見ていた」というMさんは、SNSもチェック。公式アカウントや出演者のYouTube、さらには、ドラマに出演していない佐藤栞里さんのInstagramもチェックするそう。

「佐藤栞里さんは、(Instagramの)ストーリーに『着飾る恋には理由があって』の感想をアップしてくれるんです。キュンとしたシーンを1人で再現してマネージャーさんに爆笑されたりして。その姿を見るまでがドラマだと思っています(笑)」(Mさん)

また、リアルタイムで見るときはTwitterのドラマ実況アカウントとも合わせて楽しむそう。ドラマ後半で星野源さんの主題歌が流れるシーンにも注目。いい感じのシーンで曲が流れたあと、さらにもう一度流れることが、ファンの間で「おいげん」と呼ばれているのです。「おいげん」が誰のどんなシーンで流れるのか、実況参加者同士でワクワク見ていたそうです。

一方、両親の影響で医療ドラマや刑事ドラマが好きなSさん。ドラマが始まると家族でリビングに集まり、リアルタイムで一緒に見るのがいつもの光景だといいます。

「ただ、23時からのドラマだと、その時間はリビングに誰もいないことが多くて。1人で大きなテレビを見るのも寂しいし、大学の課題に追われていることもあるので、時間帯によってリアルタイムとTVerを使い分けています」(Sさん)

1つのテレビ番組に集中して余韻に浸りたいMさんに対し、Sさんは「テレビをつけっぱなしにしたまま見る」こともよくするそう。テレビをつけながら、スマホでTwitterを検索したり、友達とチャットをしたりして、「テレビが面白いと思ったら、スマホから目を離す」と話します。

「音楽番組なんかだと、両親と感想を共有できないことが多いんです。リアルタイムでテレビを見ながら、友達ともチャットでつながって、『今の良かったね』みたいに話すのが楽しいですね」(Sさん)

YouTubeはコメント欄も含めて一つのコンテンツ

2人のテレビ番組の楽しみ方に共通していたのは、YouTubeも活用していること。テレビ番組の公式アカウントが一部分を切り抜いた動画を見ることも多く、好きな男性アイドルの姿を番組の配信動画からチェックすることも。

また、YouTubeの視聴では、コメント欄のチェックも欠かせません。Mさんは「コメント欄も含めてコンテンツ」だと話します。

「特にライブ配信のチャット欄だと、『面白い』『笑』など簡単な感想が多いんです。配信後に寄せられたコメントのほうが、内容について議論していたり、面白いところがピックアップされていたりするので、主にコメントを見ながら動画を楽しんでいます。タイムスタンプ付きのリンクで面白いシーンを指定してくれるコメントもあるので、助かりますね」(Mさん)

知らなかった情報をSNSやYouTubeで偶然知り、テレビをチェックすることもあるそう。

「Instagramで好きなアイドルグループのことを調べていると、関連動画がどんどん流れてくるんです。そこで『こんなことやってたんだ』と知って、テレビに戻ることがあります」(Sさん)

「YouTubeを見ていたとき、そのアイドルのファンの人たちがコメント欄で『推しポイント』を教えてくれたおかげで、ファンクラブに入るほど好きになったりしました。『ここであざとい顔をしてる』とか、面白いシーンの時間をコメント欄に書いてくれたりするんです。ファンから楽しみ方を教えてもらった感じですね」(Mさん)

3カ月「はまれる」ものを探してドラマに出会う

オンラインイベント中、チャット欄では参加者からの感想や質問も投げかけられました。「雑誌の興味があるページだけ読むみたいに、自分の時間も編集している感じがしました」というコメントに、MさんとSさんは同意します。

「就活のためにニュースも見なければと思い、YouTubeで配信されているニュース番組を見ていました。興味のあるニュースが探しやすく、コメント欄の議論も参考にできるので、時間を有効に使えると感じます」(Mさん)

「私も各テレビ局がYouTubeにアップしているニュースを見ています。公式なので信頼性が高いと感じますし、授業でレポートを書くのにも活用しています」(Sさん)

放送局に勤める参加者からは「ドラマを見る、という行動につながるとき、どんなことを期待されているのでしょうか?」という質問も。

「見るドラマを選ぶときは、3カ月「はまれる」ものを探しているんです。3カ月はまれる作品が何本もあると、豊かな気持ちになりますから。そのシーズンに深くはまれて生活を楽しくしてくれるものを求めて、ドラマを観ているのかなと思います」(Mさん)

まとめ

若者ほどテレビ番組が好き、ということが明らかになった今回の「メ環研のメからウロコ」。従来のテレビ受像機での視聴に限らず、見逃し配信やYouTubeなどを駆使して、多様な楽しみ方がされていることがわかりました。

インタビューでは、ドラマ出演者のファッションが気になったり、海外でも日本のテレビが売れるのではと感じたり……と、まだまだテレビについて話し足りない様子も。今後の「メ環研のメからウロコ」にご期待ください。

※こちらで発表した資料はダウンロードいただけます。

(編集協力=井上マサキ+鬼頭佳代/ノオト)

登壇者プロフィール

野田 絵美
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、食品やトイレタリー、自動車など消費財から耐久財まで幅広く、得意先企業のブランディング、商品開発、コミュニケーション戦略立案に携わる。生活密着やインタビューなど様々な調査を通じて、生活者の行動の裏にあるインサイトを探るのが得意。2017年4月より現職。生活者のメディア生活の動向を研究する。
山本 泰士
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 グループマネージャー兼上席研究員
2003年博報堂入社。マーケティングプランナーとしてコミュニケーションプランニングを担当。11年から生活総合研究所で生活者の未来洞察に従事。15年より買物研究所、20年に所長。複雑化する情報・購買環境下における買物インサイトを洞察。21年よりメディア環境研究所へ異動。メディア・コミュニティ・コマースの際がなくなる時代のメディア環境について問題意識を持ちながら洞察と発信を行っている。著書に「なぜそれが買われるか?〜情報爆発時代に選ばれる商品の法則(朝日新書)」等

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。