メディア定点調査連載コラム2021 メディア環境のデジタル化が叶えた「好きなものを好きな時に好きなだけ」

2006年から実施しているメディア定点調査。「メディア定点2021」は初めてコロナ禍のメディア環境をとらえた。コロナ禍でメディア環境はどう変化しているのか、生活者のメディア意識や行動にはどんな兆しが見えてきているのか、本コラムでご報告していく。

好きなものは、好きな時に見たい

これが、コロナ禍で高まった生活者の意識である。
メディア意識・態度63項目の中で、昨年から最も大きく伸びた「好きな情報やコンテンツは、好きな時に見たい」は、初めて6割(63.7%)を超えた(図1)。
定額制動画配信サービスの利用は急伸し、テレビ番組無料配信サービスである『TVer』の利用も増加(図2)。テレビのインターネット接続や動画をテレビで見るデバイスの所有も伸長した(図3)。コロナ禍でメディア環境のデジタル化は加速し、メディアコンテンツの選択肢は飛躍的に増加した。2017年の定点調査コラムで取り上げた生活者の“好きなものを好きな時に好きなだけ見たい”という欲求を叶えるメディア環境は整ったと言える。

~「好きなものを好きな時に好きなだけ」期待されるテレビコンテンツ~ メディア環境研究所 メディア定点調査連載コラム③|コラム|博報堂DYメディアパートナーズ (hakuhodody-media.co.jp)

気に入ったものは、繰り返し見たい

これも、メディアコンテンツに対する生活者の意識である。コロナ禍前から高まっていた「テレビ番組や動画など気に入ったコンテンツは何度でも繰り返し見たい」は6割(57.0%)近い(図4)。生活者は新しいものを見たいだけではなく、好きなものは何度でも見たいと思っているようだ。

“好きな時に見たい”は、時間の主導権が生活者にあることを意味している。いまやメディアが設定した時間通りに生活者が見てくれることを期待するのは難しい。生活者の“好きな時”に選んでもらえるように、さまざまな流通経路でメディアコンテンツを届ける必要がある。

“繰り返し見たい”欲求は、サービスの増加やデバイスの普及に伴って高まってきた。新しいメディアコンテンツは探しやすく、容易に繰り返し見てもらえる可能性が高いが、アーカイブには膨大なメディアコンテンツが詰まっている。アーカイブは、単に過去のメディアコンテンツが保管されているのではなく、いまの生活者の“好きなもの”になりうる可能性が詰まっているとも言える。その膨大なメディアコンテンツをどのような切り口や見せ方で生活者に届けていくのか、これまで以上に考えていかなければならないのではないだろうか。 “好きなものが好きな時に好きなだけ見られる”メディア環境が整ったことで、メディアコンテンツは過去も現在も関係なく、生活者の“いま、好きなもの”になる可能性が高まったのである。

図1
図2
図3
図4

新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。