メディア定点調査連載コラム2021-③ SNS Wandering

メディア環境研究所が2006年から実施しているメディア定点調査。「メディア定点2021」は初めてコロナ禍のメディア環境をとらえた。コロナ禍でメディア環境はどう変化しているのか、生活者のメディア意識や行動にはどんな兆しが見えてきているのか、本連載コラムでご報告していく。

すきま時間にSNSをさまようSNS Wandering(ワンダリング)。特に何が見たいわけでも、何かを探しているわけでもない。ちょっとしたすきま時間にSNSをあてもなく見て回ることを私は「SNS Wandering」と心密かに呼んでいる。

SNSは情報の出入り口

「SNSから得た情報がキッカケで、テレビを見ることがある」は、今年初めて4割を超えた(43.4%)(図1)。コロナ禍前の一昨年の32.3%から11.1ポイント増と、急速に伸びている。

図1

「SNSを通して、シェアした情報を見たり聞いたり読んだりする」も一昨年の31.6%から10ポイント伸長して41.6%となった(図2)。こちらも今年初めて4割を超えた。

図2

昨今、SNSが起点のメディア行動が増えている。サービス別の利用状況からはSNSの利用が伸長傾向にあることが見て取れる(図3)。

図3

SNSはなくてはならないものとして私たちの日常生活に組み込まれ、特に目的があるわけではなく、あてもなく見て回ることも増えているのではないだろうか。そうした中で、情報との偶然の出会い、いわゆるセレンディピティが生まれているととらえている。SNSは情報拡散という「情報の終わり」に寄与するイメージがあるが、調査結果からは「情報の始まり」としての役割が高まっていることがわかる。SNSは情報の出入り口になっていると言えそうだ。

SNSは「つながり」も「情報取得」も

メディア定点調査では、SNSをどのように利用しているかをサービス別に聞いている。Facebookは知り合いとの交流、Twitterは情報収集、LINEは家族など近しい人との日常的なやりとり、Instagramはビジュアルでの情報活用など、各サービスの利用内容からは生活者がSNSを使い分けている様子が見えてくる(図4)。

図4

利用が伸びている項目は(各サービス利用者ベース)、「情報を検索する」[Twitter:52.8%(2018年)→60.1%(2021年)、Instagram:25.5%(2018年)→38.7%(2021年)]や「話題のニュースを知る」[Twitter:56.2%(2016年)→62.9%(2021年)]、「買い物の時に参考にする」[Instagram:25.0%(2016年)→39.5%(2021年)]となっており、SNSは人とのつながりだけではなく、情報源としての活用が高まっていることがわかる。Instagramといえば、日本でのサービス開始当初(2014年)は若年女性が世界観を表現する場というイメージが強かったが、「スタンプや写真、動画などで自己表現できる」という項目は、5年間で17.1ポイントと大きく下がっており(2016年43.6%→2021年26.5%)、自己表現の利用が減少傾向にあることは興味深い。
※ 各調査項目の聴取開始時点

今年初めて、若年層に支持されているTikTokの利用状況を調査した。全体では8.2%と1割を切っているが、10代(15~19歳)の利用は男性32.8%、女性42.9%と、やはり若年層の利用が高いことがわかった。今後も若年層中心の利用状況が続くのか、Instagramのように他の年代にも広がっていくのか、注目していきたい。

新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。