定点調査コラム~デジタル化によって拡がるメディア行動「メディア定点調査2018」時系列分析より~新美上席研究員

メディア環境研究所が2006年から年1回定点観測している「メディア定点調査」は、今年13年目を迎えました。時系列分析から見えてきた生活者のメディア行動や意識の変化をご紹介します。

デジタルメディアの接触時間の増加により、メディア総接触時間は過去最高の396.0分

2018年のメディア総接触時間は過去最高の396.0分(1日あたり/週平均 東京 ※数字はすべて東京)。昨年より18.0分増加しました。「携帯/スマホ」が12.9分増、「パソコン」が7.3分増、「タブレット」が4.9分増とデジタルメディアの増加が大きく、マスメディアは「雑誌」(0.4分増)を除いて減少しました。「携帯/スマホ」の接触時間は今年103.1分と初めて100分を超え、2011年の81.7分をピークに毎年減少し続けていた「パソコン」が7年振りに増加して66.6分となったことは注目のポイントです。

デジタルメディアが全体に占めるシェアは50.4%。初めて1/2を超え、過半数へ

デジタルメディア(「パソコン」「携帯/スマホ」「タブレット」の合計)が総接触時間全体に占めるシェアは50.4%。調査開始以来、初めて1/2を超えて過半数に達しました。中でもモバイル(「携帯/スマホ」と「タブレット」の合計)のシェアは年々拡大しており、モバイルが総接触時間全体に占めるシェアは33.6%と、初めて1/3を超えました[図1・図2]。

[図1]メディア総接触時間の時系列推移
[図2]メディア総接触時間の構成比 時系列推移

「仲間との話題に必要」「習慣」「役立つ」のメディアイメージ「携帯/スマホ」が首位に

メディアイメージでは「携帯/スマホ」の躍進が目立ちました。「習慣になっている」が5ポイント増(2017年:59.1%→2018年:64.1%)、「仲間との話題に必要」が6.2ポイント増(2017年:45.0%→2018年:51.2%)と「テレビ」を抜き、「役立つ情報が多い」は2.3ポイント増加(2017年:46.3%→2018年:48.6%)して「パソコン」「テレビ」を抜き、首位に立ちました。「携帯/スマホ」はメディアイメージ42項目中17項目で首位となり、全メディアで最多となりました[図3~図6]。

[図3]メディアイメージ 「習慣になっている」
[図4]メディアイメージ 「仲間との話題に必要」
[図5]メディアイメージ 「役立つ情報が多い」
[図6]「携帯/スマホ」が首位のメディアイメージ17項目

ニュース、動画、ショッピングetc.「携帯/スマホ」の利用機能が拡大

「携帯/スマホ」の利用機能も拡大しています。検索は今年「携帯/スマホ」(83.9%)が「パソコン」(79.0%)を抜き、動画視聴も「携帯/スマホ」(無料:54.0%、有料:11.2%、)が「パソコン」(無料:52.9%、有料:10.1%)を上回りました。

今年、「携帯/スマホ」の利用機能で大きく伸びたのは、ニュースを見る(2017年:61.3%→2018年:68.1%)とショッピング(2017年:40.7%→2018年:47.5%)で、それぞれ7ポイント近く伸長しました[図7]。「携帯/スマホ」は生活のあらゆる場面で利用されるようになり、最も身近にある生活インフラになったといえます。

[図7]「携帯/スマホ」 利用機能

デジタル化によって変わるメディア行動

マスメディアもデジタル化しています。2016年からの利用率の変化を見てみると、TVer(2016年:3.8%→2017年:13.7%→2018年:15.4%)、radiko(2016年:21.9%→2017年:23.7%→2018年:27.4%)、定額制電子雑誌サービス(2016年:4.7%→2017年:6.2%→2018年:8.7%)など、マスメディアのデジタルサービスがじわじわと伸びていることがわかります[図8]。

デジタルサービスは「好きな情報やコンテンツは、好きな時に見たい」(56.4%)という生活者の欲求に応え、モバイルの普及との相乗効果によって、いつでもどこでも何度でもメディア・コンテンツを楽しむことができる環境を生み出しました。

[図8]デジタルサービスの利用率推移

生活者が求めているメディア環境とは

メディアに関する意識・態度を見てみましょう。今年最も変化が大きかったのは、「情報やコンテンツは無料で手に入るものだけで十分だ」でした。2016年から見ると、17.8ポイント減少しています(2016年:46.0%→2017年:39.2%→2018年:28.2%)。

このことは、「生活者は必要であれば情報やコンテンツにお金を出す」ということを意味しているととらえることができます。無料で大量の情報やコンテンツが溢れる中、有料であっても、自分にとって必要な質の高い情報やコンテンツにいつでもすぐにその場に合った形で触れたいという欲求があるのではないでしょうか。デジタル化は必要条件ではあっても十分条件ではなく、生活者の欲求に応えることが、今メディアに求められていることなのです。

新美 妙子
上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。