メ環研の部屋「家の中に広がるみらいの情報生活」後編

前編に引き続き、「ゴーグルで覗くみらい情報生活調査」体験者インタビュー及び脳波モニタリングで分かったファインディングスを深堀していきます。生活者がIoTを家に導入するときは情報、気持ち、経済面においての評価が決め手になります。女性はそのインタラクションを楽しみ一方、男性は簡潔なやり取りを好んでいると判明しました。

調査の詳細について

「ゴーグルで覗くみらい情報生活調査」の詳細については、調査リリースをご参照ください。
・第1弾:https://mekanken.com/news/1219/
・第2弾:https://mekanken.com/news/1236/

概要

①家庭用IoT普及には、「情報の得」、「気持ちの得」、「経済の得」がポイント。そしてベースとして必要なのは、信頼できる情報源であること。
・情報の得:自分を理解し先回り、広告ではなく提案をしてほしい。
・気持ちの得:IoTに自分のことを理解してほしい、思いやりや愛着を求める。
・経済の得:安心して買えることをサポートしてほしい。
②女性はIoTとの会話を楽しみ、男性は簡潔なやりとりを求める傾向がある。視覚情報を組み合わせることで表現の幅を広げてくれる。

スピーカー

メディア環境研究所 上席研究員 野田 絵美
メディア環境研究所 上席研究員 小林 舞花

VRで未来の家体験者の声

前編に続き、VRで未来の家を体験した方のインタビュー概要をご紹介します。

広告ではなく、自分の必要なものを提案してくれる

野田:チャットで「執事を育てるようなものかな」とコメントがありましたが、確かに参加者から「大事なのは先回り」、「気持ちの良い先回り」という意見を多くいただきました。自分の状態であったり状況を理解した上で、色々なサンプル取り寄せたり、商品を紹介したりしていますが、それは広告ではなくて提案なんだという風に感じてくれたことが発見でした。

家の中のメディアとのつながりを感じた体験者

野田:意外だったポイントが2つめです。「気持ちの得」ということです。単なる機械ではなくて、自分の状況をすごく理解して、見守ってくれている、例えばパートナーという言葉が出てきました。これが、どんどん家の中のメディアとの絆作りに繋がっていきそうな感情だなと感じました。

VR体験で一番人気だったのは「ヘルスチェック」

野田:それぞれ8つの体験、どれが人気だったかという個別の話にいくと、1位はヘルスチェックですね。それから対策提案。圧倒的に80%の人が魅力だと答えました。次点はほぼ横ならびで、冷蔵庫が僅差2位でした。自分の状況を理解した上での提案だとうれしいとわかりました

体験者が感じた、情報生活への懸念

野田:しかし、ふつふつと懸念点が出てきます。「おせっかいなのか、気の利いた先回りなのか」と、チャットの方でもありましたけれど、ただでさえ情報過多の時代なのに、いらない情報が増えてしまうではないかと懸念されました。「自分が受動的な人生で良いのか」「そんなので良いんだろうか?探求心が損なわれる、堕落してしまう」、日本人的な真面目さを感じる意見も出てきました

経済的には最適化してほしい

野田:情報生活の評価ですが、あると便利、魅力度も高い、便利さも高いです。ですが、必要性を尋ねた時に、「ややある」という話ですが、「でも、必要とは言えないとっても付加的なサービス」という声がありました。これが、大きなIoTの導入、日本の家の中に導入するときの大きな障壁になっているということがわかります。どうやったら取り入れてくれますか?というときに、経済的には最適化してほしい、というのが一つ発見です。

家計まで、経済的なところまで理解してくれたら、すごく助かるということですね。その値段を理解してくれた上で、一週間使ってよい許容額みたいなものまで理解した上での提案をしてほしいとうことです。

既存のブランドやマスコミは情報の信頼度を高めてくれる

野田:ニュースを読む、歯磨きの時にも天気を伝えるときにも、情報源が何なのかが気になります。情報源はマスコミなのか、それともネットで、誰かよくわからないSNSなのか、やっぱり情報としての信頼性は、ふつふつと気になってきていました。なので、中身の情報は、既存の大手メディア、大手企業の商品ブランドなど、そういう既存のブランドが情報の信頼性を高めることに役立ちそうという風にいえます。

「情報の得」、「経済的な得」、「経済の得」はIoTが家に導入するときのポイント

VR体験中の脳波を11のワードで分析

小林: VRを体験して頂いている間、体験者がどのような反応を示しているのかを、脳内モニターでモニタリングしていました。ここで脳内モニターには11のワードが出現するんですけれども、3つの基本指標と8つの感情指標で、11個のワードが出てきます。

まず3つの基本指標ですけど、「Att」がattention、どの程度注目しているか、そして、「med」がmeditationで、リラックスしているか、そして「like」が好意です。

感情表現は、こちらの8つになっています。happy、excited、nervous、upset、sad、bored、calm、serene、ということで、幸せ、ワクワク、イライラ、動揺、悲しい、退屈、冷静、穏やか、という言葉を使って表現されています。

VR体験では女性がポジティブな感情を見せてくれた

小林:女性は会話を楽しみ、男性は簡潔なやりとりを求める、という傾向がありました。女性の方はhappyでポジティブな気持ちがいっぱいあるのに対して、男性の方はboredとかsadというちょっとマイナスな感情が時間の経過とともに増えていきます。

音声に視覚情報を組み合わせれば、表現の幅を広げてくれる

小林:次世代のメディア環境における表現のポイントとしては、音声でのやりとりなので、今回はスマートスピーカーを使われている方も結構いらっしゃいました。ただ、音声なので、1度に処理できる情報量には限界があります。

選択肢が増えていくと、簡潔でなければ、特に男性はイライラに繋がるので、難しいところがあります。音声のみの場合は簡潔さが重要なんですけれども、視覚情報を組み合わせることでその表現の幅や可能性は変わっていくと思われます。購買の話になったときに、選択肢を表示したり、値段を知らせたりし、視覚情報の活用ができると、もっと可能性が広がるという風に思いました。

1時間にわたってあっという間に「メ環研の部屋」が終わりました。本編の後に、チャットで盛り上がったみなさんはその直後に行われたネットワーキングタイムで意見交換ができ、充実したひとときでした。

こちらで発表した資料はダウンロードいただけます。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。