今、テレビ番組の見られ方はどうなってる?~テレビ番組視聴意識調査2023~ @メ環研の部屋

メディア環境研究所が2年前に実施した「テレビ番組視聴意識調査2021」。その調査報告では、若者ほどテレビ番組がとても好きで、スマホを活用しながらテレビを自由に楽しんでいることがわかりました。

「若者のテレビ離れ」のイメージを覆す結果ですが、当時はコロナ禍であり、外出もままならなかったころ。あれから2年が経ち、他のエンタメも復活してきたなかで、テレビ番組への意識はどのように変化したのでしょうか。

今回は「テレビ番組視聴意識調査2023」の調査報告から、コンテンツとしての“テレビ番組”がどのように見られているのかを深掘りします。担当はメディア環境研究所の野田上席研究員です。

テレビ番組の好意度に変化はあったか?

本調査は、15歳から69歳までの男女1778人を対象に行われました。2021年の調査ではテレビ番組の好意度について「若者ほどテレビ番組がとても好き」という結果が出ていましたが、その傾向は2023年も変わらないようです。

10~20代で33.2%、30~40代で24.7%、50~60代で24.8%がテレビ番組を「とても好き」と回答しており、特に10~20代は約3人に1人にのぼります。これは2021年の調査結果とほぼ同じであり、若者がテレビ番組に好意を持っていることに変化はないようです。

では、なぜテレビ番組が好きなのでしょうか。その理由を自由回答で尋ねたところ、「ネット上ではなかなか見ることができない大型企画をしているから」、「インターネットよりも情報の信頼性が高いから」など、ネットコンテンツの良さを知ったうえで、テレビの良さを語る意見が見られました。

また、「友達との話題にもなり共有しやすい」「世の中が分かる」「最近の流行がわかりやすい」という意見もありました。ネット上でさまざまなコンテンツがあふれる一方で、テレビは「世の中全体を見渡せるもの」と捉えられているようです。

テレビ番組の視聴スタイルに変化はあったのか?

見逃し配信が普及し、スマホやタブレットでテレビを視聴するスタイルも定着してきました。ではこの2年間で、テレビ番組の視聴スタイルに変化はあったのでしょうか。

視聴スタイルを尋ねてみると、最も多いのは「テレビ」。次いで「スマホ」「パソコン」「タブレット」という順でした。この傾向は、2021年とほぼ変わっていません。

しかし、年代別に見てみると、わずかながら変化が見られます。

「テレビ」と答えた人の割合を2021年と比べてみると、50~60代ではほぼ変化がない一方、30~40代では7ポイント減、10~20代では6.5ポイント増となっていました。絶対値としては他の年代よりも少ない70%ですが、以前に比べ若者のなかでテレビ番組を「テレビ」で見る機会が増えているようです。

では、テレビ番組をどのように見ているかを尋ねたところ、「リアルタイム」「録画」に次いで、「見逃し配信」が3位に浮上しています。年代別に見ても、2021年に3位だった「無料動画」を、「見逃し配信」が上回っていることがわかります。

メディア環境研究所が行った別の調査(メディア定点調査2023)では、「テレビのインターネット接続」「動画をテレビ画面で見られるデバイス所有」が、いずれも2021年に比べて増加。また、合わせて「TVer利用率」も上昇していました。

野田上席研究員
野田上席研究員

テレビがネットにつながるようになり、さまざまなコンテンツを視聴可能になりました。これにより、テレビで見逃し配信サービスを利用し、テレビ番組を見る機会が増えたのではないかと推測します。

「TVer」の利用状況は?

先ほどのグラフで、利用率を大きく伸ばしていた「TVer」について、さらに掘り下げていきましょう。

TVerについて、「知っているか」「利用しているか」を聞いたところ、約9割が「知っている」と答え、約半数の46.6%が実際に利用していました。年代別に見ても、10~20代で過半数、50~60代でも4割が利用しています。

では、TVerはどのようなデバイスで視聴されているのでしょうか。

全体では「スマホ」が54.1%、「テレビ」が37.1%、それに「パソコン」「タブレット」と続いています(※複数回答)。

年代別に見ると、年代が上がるにつれてスマホでTVerを見る人は減っていき、男性50~60代はパソコン、女性50~60代はテレビでの視聴が1位となっています。スマホの小さな画面ではなく、より大きな画面で見たいということなのかもしれません。

さらに特筆すべきは、10~20代の男性は約4割がテレビでTVerを見ていること。各年代の「テレビ」の数値と比べても、高い比率となっています。

野田上席研究員
野田上席研究員

社内の20代男性に聞いてみたところ、バラエティ番組を見るときはテレビが多いそうなんです。スマホだと字幕が読みにくいので、テレビの大画面で見るほうが楽なのだそう。

山本グループマネージャー
山本グループマネージャー

テレビコンテンツを見るための大きなスクリーンとして、テレビの存在感が高まっているのかもしれないですね。もはやテレビも、インターネットに接続するデバイスのひとつですから。

この先、若い世代を中心に、このテレビというデバイスを積極的に使いこなすようになるのではないでしょうか。

広がる“なんとなくTVer”

見逃し配信サービスは、テレビ番組の新たな視聴習慣をもたらしました。たとえば10~20代のTVerユーザーのうち4割は「テレビ番組を見る機会が増えた」「ドラマを見る機会が増えた」と回答。特にドラマについては、過半数が「ドラマは全てTVerでみる」と答えています。

また、見逃し配信サービスが持つ「いつでも好きな場所で見られる」という特徴は、「リアルタイム」の捉え方も変えているようです。

「自分が見たいものはTVerでいつでも見られるので、リアルタイム放送では家族みんなが見たいものを見るようになった」という人が全体の半数近く、10~20代では6割強にのぼります。さらに「好きな番組ほどリアルタイムで見るようになった」という声も少なくありません。

ここで着目したいのが、「TVerの習慣性」です。「TVerを見るのが習慣になっている」という問いに対し、ユーザーの過半数が「あてはまる」と答えています。

野田上席研究員
野田上席研究員

最近インタビューした中に「スマホで何となく見るアプリはInstagram、Twitter、TVer。この順番に無意識に見てしまう」という人がいました。なんとなく見るのはSNSというのはよく聞く話でしたが、今「なんとなくTVerを開いて、なにか見るものはないか探す」という行動も広がりつつあるのでは?と考えました。

そこで、TVerを訪れる際、「どの番組を見るか決めてからTVerを見る(目的型)」と「なんとなくTVerを眺めながら見る番組を決める(なんとなく型)」のどちらが多いのかを聞いたところ、10~20代では約3割が「なんとなく型」であることがわかりました。

野田上席研究員
野田上席研究員

TVerは主に見逃し配信ですから、「あの番組を見逃したからTVerを使う」という目的型が当然多いだろうと考えていました。確かに、全体の4人に3人はそうした使い方なのですが、思った以上に「なんとなく型」も多いことに驚きましたね。

山本グループマネージャー
山本グループマネージャー

私も、週末に子どもが昼寝をして2時間くらい余裕ができたときに、TVerをつけて「何かないかな」とぼーっと見ていることがありますよ。ご当地の武将について取材したバラエティ番組を見つけて、「勉強になるなぁ」という感じで楽しんだり。

小林上席研究員
小林上席研究員

私はドラマをよく見るんですが、クールの始まりのときはTVerでなんとなく画面を見ていることがありますね。

野田上席研究員
野田上席研究員

なるほど。「見逃し配信に限らないTVerの価値」みたいなものが生まれているのかもしれないですね。

視聴スタイル別の好意度は?

「若者ほどテレビ番組がとても好き」という結果を踏まえて、ここでは「どういう視聴スタイルが好きなのか」を探ってみましょう。まずは「最も好きな視聴スタイル」について聞いてみました。

1位が「リアルタイム」で40.0%、2位が「録画」で27.6%、3位が「見逃し配信」で11.0%という結果になりました。

では、1位の「リアルタイム」について、その魅力はどこにあるのでしょうか。

リアルタイムと聞いてまず思い浮かぶのが「ライブ感」でしょう。「ネタバレがない」「好きなアーティストが出演する生放送の音楽番組を観ると気分が上がる」といった回答は、リアルタイムが生み出すライブ感に魅力を覚えているものと言えそうです。

また、「Twitterなどで感想を書きながら見るから一体感がある」「家族と一緒に見られるから」など、誰かと一緒に見ることで盛り上がれるという意見も見られました。

さらに見ていくと、「見たいものを積極的に見る」のとは違うタイプの回答も目立ちます。「つけたら何か面白そうなものがある」「何気なくつけていろんな情報が入ったほうがいいから」「気楽だから」「選択肢が狭いからいい」「特に何も考えなくていい」など。

テレビ番組やコンテンツ、演者などに対して熱い気持ちがあるわけではない。だからこそのリアルタイム、という選択のようです。では、テレビ番組はどのように選ばれているのでしょうか。

「番組選びは失敗したくない」という問いに、約半数の人たちがYESと答えています。しかし、その一方で「見る番組を選ぶためにいちいち情報を調べるのは億劫だ」という人も、ほぼ同じ割合で存在しているのです。

せっかく時間を使うなら、番組選びに失敗したくない。でも、時間をかけて調べるのは面倒くさい。その結果、リアルタイムで放送されているものから選ぶことになり、「選択肢が狭いからいい」という点が魅力に映るのではないでしょうか。

ここまでの調査報告をまとめました。見たいものが決まっているとき、見逃し配信には「好きなとき・すぐ・繰り返し見られる」という価値があり、リアルタイムには「最新・ライブ・みんなと見られる」という価値があります。

一方、見たいものが決まっていないとき、見逃し配信には「たくさんの選択肢から好きに選べる」、リアルタイムに「限られた選択肢から楽に選べる」というメリットがあります。

見逃し配信とリアルタイムのあいだには、相反する特徴があります。ですが、それぞれに価値を感じられる人たちが「テレビを見る」という行為でつながっていると言えそうです。

野田上席研究員
野田上席研究員

定額制動画配信サービスが始まったとき、うれしい反面「たくさんあって選べない!」というストレスもありましたよね。あれを経験したからこそ、リアルタイムの「限られた選択肢」にありがたみを感じるような気がします。

山本グループマネージャー
山本グループマネージャー

選択肢が増えれば増えるほど、人間は選ぶことを放棄するもの。そういうときは、自分が選びやすい「枠組み」を作るのも有効です。過去に行ったインタビューでは「カンテレのドラマが好きで全部見ている」という学生がいましたが、あれもひとつの枠組みの捉え方なんだろうと思います。

まとめ

コンテンツが多様化するなか、「テレビ番組」はいったいどのように思われ、どのように見られているのか。調査報告からは、3つのポイントが見えてきました。

1つ目のポイントは、若者ほどテレビ番組がとても好きだということ。これは、2021年の調査報告から変わっていません。さらに2023年の調査報告では、「テレビ番組をテレビで見る」という傾向も見えてきています。テレビがインターネットに接続されたことにより、「見逃し配信サービスをテレビで見る」という視聴スタイルも生まれました。

2つ目のポイントは、TVerの利用が広がっていること。特に若者のあいだでは、見逃した番組を見るだけでなく、なんとなく見るものを探す場になっているようです。チャンネルをザッピングしながらテレビを見ていた感覚が、TVerというサービスにも芽生えつつあるといえるでしょう。

最後のポイントは、「リアルタイム」が最も好まれている視聴スタイルであること。「特に見たいものがある」「家族で見るのによい」という積極的でポジティブな理由だけでなく、「選択肢が限られていて楽」といった点も、リアルタイム視聴のひとつの価値であることがわかりました。

野田上席研究員
野田上席研究員

今回の調査では、テレビ番組をみるスクリーンの一つとしてテレビを活用する若者が増えているという結果が予想外でした。テレビがネットにつながったことで、スマホにはない大きなスクリーンでみるからこその魅力が再認識されているのかもしれません。

山本グループマネージャー
山本グループマネージャー

テレビがネットに接続されたことで、リアルタイムで積極的に視聴したり、なんとなく眺めたりなど、さまざまなモードをカバーできるようになったのは面白いですね。「なんとなくTVer」という行動に見られるような、“テレビの受動性”について改めて考えてみるのも良いのではと思いました。

※こちらで発表した資料はダウンロードいただけます。

登壇者プロフィール

野田絵美
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、食品やトイレタリー、自動車など消費財から耐久財まで幅広く、得意先企業のブランディング、商品開発、コミュニケーション戦略立案に携わる。生活密着やインタビューなど様々な調査を通じて、生活者の行動の裏にあるインサイトを探るのが得意。2017年4月より現職。生活者のメディア生活の動向を研究する。
山本泰士
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 グループマネージャー兼上席研究員
2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとしてコミュニケーションプラニングを担当。11年から生活総合研究所で生活者の未来洞察に従事。15年より買物研究所、20年に所長。複雑化する情報・購買環境下における買物インサイトを洞察。21年よりメディア環境研究所へ異動。メディア・コミュニティ・コマースの際がなくなる時代のメディア環境について問題意識を持ちながら洞察と発信を行っている。著書に「なぜそれが買われるか?~情報爆発時代に選ばれる商品の法則(朝日新書)」等。
小林上席研究員
小林舞花
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
2004年博報堂入社。トイレタリー、飲料、電子マネー、新聞社、嗜好品などの担当営業を経て2010年より博報堂生活総合研究所に3年半所属。 2013年、再び営業としてIR/MICE推進を担当し、2014年より1年間内閣府政策調査員として消費者庁に出向。2018年10月より現職。

※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。